免疫力を高める「園芸療法」とは?
園芸療法とは、“花と緑で人を癒す”療法です。
「園芸セラピー」や「Horticultural therapy」とも言われますが
ここでは「園芸療法」で述べていきます。
「園芸療法」とはいいかえると、草花や野菜などの園芸植物や、身の回りにある自然とのかかわりを通して、心の健康、体の健康、社会生活における健康の回復を図る療法といえます。
園芸療法の実践には、農業・園芸、医療、福祉、心理、教育などさまざまな分野の知識や技術が必要になりますが、ここでは「園芸」に注目していきます。
約400万年前に誕生した人類は、草原のような環境で生活してきたと考えられています。こうした、はるか昔から続いている人と緑の関係は、現代社会では、ガーデニングや自然・公園の散策といった形で続いていると考えることもできます。日々の生活で疲れやストレスを感じた時には、花を観賞したり森林浴をしたくなりますね。
園芸療法は、人類が古来から育んできた人間と植物の相互関係を再び活用しているといえるのかもしれません。
人の健康に植物や自然を活用することは、古代ギリシアの医師が健康改善に自然散策や農作業を勧めたという記録に始まりますが、現在では、欧米諸国・アジア諸国に広がり、園芸療法やグリーン・ケアなどの活動として行われています。
特に、ベトナム戦争で心身ともに傷ついた兵士を癒す為に、広く認知される様になりました。
園芸には、感じる、(植物と)過ごす、育てる、採る、利用するなど、多くの人の興味をひき、楽しみながら精神や身体を刺激する要素、社会的健康を育む要素が含まれています。
その結果、ストレス軽減、意欲回復、認知機能の維持・向上、日常生活に必要な能力の維持・向上、社会性の向上、生活の質の維持・向上など、いろいろな健康上の効果が期待でき、療法となりうるのです。
園芸療法では、園芸療法を学んだ専門家が、一人で園芸を行うことは難しいけれども、園芸を取り入れたら、より健康的な生活を送ることができると考えられる人(幼児から高齢者まで)を対象に、健康状態を含む本人の全体像や思いなどを十分理解した上で目標を定め、緑のある環境や花や緑とのかかわりを通して、興味や意欲を引き出し、また、周囲の人々の影響力も借りて、心や身体が動くようなプログラムを継続的に提供し目標達成をはかっていきます。
実際に私が携わった際に、例えば不眠症の方が、昼間はガーデンや畑で植物に触れて体を動かして、夜はラベンダーを枕の下に入れて寝たら、睡眠薬がなくてもぐっすりと眠れる様になった事や、植物の世話をすることから生まれる積極性や向上心の変化を感じるとる事がありました。
現代の欧米やアジア諸国では、医療・福祉予算の増大抑制、高齢社会やストレス社会への対応など共通の課題があがっています。
園芸療法は、日本においても、歴史的には作業療法の一種目(園芸)から発展したものととらえることができますが、すでにその枠を越えて、前述のような現代社会の課題を解決するツールの一つとしての期待も世界的に高まっています。